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2013年9月の5件の記事

2013年9月30日 (月)

宮家邦彦の外交・安保カレンダー(9月30日-10月6日)

今週は米・イラン関係が注目だ。結論から言えば、米国はこれから数ヶ月間、イランのロウハニ新大統領に翻弄されることだろう。この原稿を書いている最中にも、同大統領がテヘランと米国の都市を結ぶ直行便の再開を検討するよう指示したというニュースが飛び込んできた。流石はロウハニ、思ったとおりの知恵者だ。

オバマ大統領は27日、空港に向かっていたロウハニ大統領に執務室から電話をかけた。ロウハニが帰国した際、空港では保守強硬派の学生ら数百人が投石して抗議した。ネタニヤフ・イスラエル首相はこの新しいイラン大統領を「羊の皮をかぶった狼」と非難した。これら三者三様の状況はイラン核開発問題の複雑さを示している。

このような状況はイスラエルと米国の対イラン強硬派にとって悪夢である。とにかく、今度のイランの相手は「まとも」だからだ。前任者のように、「ホロコーストはなかった」とか、「イスラエルを抹殺する」などとは言わない。こうなると、彼らの強硬路線を正当化することが非常に難しくなる。

以前のようなテヘラン・テルアビブ・ワシントンの三つの強硬派の美しき「共存関係」は崩れていく。ロウハニの穏健な態度を前に強硬姿勢を貫くことは容易ではない。かくして、米イラン関係は久方ぶりに話し合い再開の機運が出始めている。これ自体は大変結構なことだ。

問題は恐らく、こうした動きがイラン核疑惑問題の根本的解決には繋がらない可能性が高いことだろう。ロウハニに核兵器開発技術の取得を断念する権限はない。しかし、オバマ大統領を説得し、米国を納得させる可能性があることは事実であろう。

このようなレベルの高い外交ゲームに今のワシントンは耐えられるだろうか。つい先日ロシアにしてやられたオバマ政権を見ると、非常に疑問である。他方、強硬派同士の共存関係が変化しつつある今、イスラエルや米国の強硬派が主導権を取り戻すことも容易ではないはずだ。

今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

2013年9月23日 (月)

宮家邦彦の外交・安保カレンダー(9月23-29日)

今週はこの原稿をニューヨーク(NY)で書いている。23日から日本の外務大臣が、24日からは総理大臣がそれぞれNY入りする。オバマ大統領がいるらしく、マンハッタンの交通はいつも以上に混雑。空港に行くため15分前に呼んだタクシーがまだ来ない。

先週末はドイツの総選挙がメルケル首相の勝利に終わり、欧州方面は一息ついた。今週の関心はやはり米国政府の閉鎖(shutdown)をめぐる米国大統領と議会の攻防だろう。9月末までに政府と議会が合意しない限り、閉鎖は不可避となる。

米政府の報道官は「9月末までにオバマ大統領が議会指導部と協議する公算が大きいが、政府機関が閉鎖されないよう議会が責任を持って行動する必要がある」と述べたそうだ。そんな呑気なことを言っている場合ではないだろう。

もっとも、政府の「閉鎖」と聞いても米国人はあまり驚かない。1977年から1996年までに大小合わせて17回の「政府閉鎖」が起きており、その「閉鎖期間」は合計で何と109日もあったのだそうだ。

そういえば、90年代前半の筆者のワシントン(DC)在勤中もそんな議論があった。「閉鎖」という割にはあまり大騒ぎにならなかった。しかし、今回は違うらしい。専門家によると、今回は既に予算強制削減措置のあおりで、状況はかなり厳しいのだという。

先ほどNYからDCに移動してこの原稿を書き続けているが、当地の新聞はオバマ大統領と連邦議会の駆け引きをまるでスポーツのように報じている。例のシリアをめぐる大騒ぎとワシントンの海軍施設での発砲事件をめぐる銃規制の議論でオバマ大統領は劣勢なようだ。

今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

2013年9月16日 (月)

宮家邦彦の外交・安保カレンダー(9月16-22日)

今週の目玉は22日に行われるドイツ連邦議会の選挙だろう。もう米国はシリアで何もしない、いや、できない。オバマ大統領が2週間前に「決定」した筈の「対シリア攻撃」だが、そもそもドイツでは誰もシリアに関心がないかのようだ。

15日のバイエルン州での選挙結果はメルケルにとって必ずしも芳しくなかったそうだ。メルケル率いるCSU(キリスト教民主同盟)の姉妹政党CSU(キリスト教社会同盟)は勝ったが、肝心の連立相手FDPが惨敗したからだ。それにしてもややこしい制度である。

ドイツの選挙制度は「小選挙区比例代表併用制」、要するに比例代表制を基本としつつ小選挙区制の要素を加味したものだ。定数は598、半数の299が小選挙区から、残り半数が比例代表により各政党の名簿から選ばれる。

有権者は2票持ち、各選挙区候補者と政党にそれぞれ投票する。各党が獲得する総議席数は政党に対する投票数に比例して決められるが、これとは独立して選挙区では最多得票を獲得した候補が当選する。

従って、場合によっては政党割り当て分を超える議席を得る政党も出るらしい。その際は「超過議席」が生じ、それに見合うよう「調整議席」が他党に追加配分されるので、定数が598を超える可能性もあるのだそうだ。何とややこしい制度だろう。

更に、比例代表で政党が議席を得るには得票の5%以上を獲得するか、または選挙区の当選者が3名以上いる必要があるらしい。この「5%条項」がメルケルの連立相手FDPの前に立ちはだかっているのだそうだ。

かなり勉強したつもりだが、ドイツの選挙制度は分かりにくい。一度多党化が進むと、なかなか安定多数ないし二大政党制に戻りにくいような気がする。メルケルが今回の選挙で勝てるか否かは、欧州政治にかなりインパクトがあるだろう。

ギリシャでは16日から20日まで公務員が性懲りもなく、またストライキを行うそうだ。これで、ドイツ内政が不安定化すれば、欧州でまともな国はなくなるかもしれない。その意味でも、22日の選挙結果は欧州の動向にかなりのインパクトを与えるだろう。

シリア問題の裏で今誰も語りたくないのがヨルダンの行方である。1978年のいわゆる「キャンプデービッド合意」体制はエジプトとヨルダンの対イスラエル平和条約とシリア・イスラエル間の事実上の非戦紳士協定により成り立っていた。

そのヨルダンの国王が15日から18日まで中国を訪問する。中国は中東で着々と力を付けていると思う。今週ワシントンに出張するので、このあたりについても政府や議会関係者に話を聞いてくるつもりだ。今週はこのくらいにしておこう。

いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

2013年9月 9日 (月)

宮家邦彦の外交・安保カレンダー(9月9-15日)

2020年東京オリンピック決定は久し振りに嬉しいニュースだ。関係者の方々のご努力に敬意を表したい。直前に原発のニュースが再び世界のメディアで流れ心配したが、今から7年間、日本が何も出来ない訳はない。結果的には順当な勝利なのか。

今週は10日にもオバマ大統領がシリア政府軍による化学兵器使用について米国民向けの演説を行うという。大統領が限定的軍事介入を決断しながら攻撃権限につき米議会に承認を求めることの異常さについては先週書いたので繰り返さない。

時間が経つにつれ、非人道的な化学兵器使用に対する国際社会の一致した懲罰という大義が薄れ、この問題は議会とうまくいっていない大統領の政治的劣勢の挽回と米国大統領のクレディビリティという米国内政問題に矮小化されつつあるようだ。

バシャール(アサド大統領)は死ぬまで化学兵器使用を認めないだろう。元眼科医の彼が本気で使用を命令したとは常識的には考えにくいからだ。他方、シリア軍の一部が勝手に使用した可能性は否定できない。既にシリア軍・アサド政権は壊れているのだろう。

欧州諸国も腰が引け始めた。時間が経てば経つだけ、「大山鳴動」ということか。これが21世紀型米国「内向き」姿勢だとすれば、オバマ政権が続く限り、中東、東アジアなどで米国の足許を見て、その意思をテストする動きが頻発するかもしれない。

目立たないが、11日からベルディムハメドフ・トルクメニスタン大統領が日本を公式実務訪問する。国賓ではないが、天皇陛下との御会見、宮中午餐、安倍総理との会談、夕食会などが予定されている。中央アジアの国々はもっと大切にすべきだ。

今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

2013年9月 2日 (月)

宮家邦彦の外交・安保カレンダー(9月2-8日)

先週末はCNNテレビに「釘付け」となった。オバマ大統領がシリア政府軍による化学兵器使用を確信し、限定的軍事介入を決断した。ここまでは驚かなかったが、対シリア攻撃の権限について米議会に承認を求めたと聞いて我が耳を疑った。

中途半端というか、稚拙というか、良い形容詞が思い浮かばない。今回の対シリア政策の意思決定はオバマ政権の典型的外交として永く語り継がれるだろう。数年後には世界中の大学の国際関係学科で絶好の教材となるのではなかろうか。

オバマ大統領の仕事はイラク・アフガンからの米軍撤退と米国内の再建であり、海外での新たな軍事介入には極めて慎重だった。エジプトでクーデターが起きようが、シリアで内戦が激化しようが、知ったことではなかったはずだ。つい最近までは。

ところが先月大統領は突然政策を変更し、シリアによる化学兵器使用は「レッドライン」発言が飛び出した。化学兵器の非人道性を思うあまりの衝動的な発言だったのか。理由はよく分からない。

とにかく、大国の最高指導者が一度「レッドライン」に言及した以上、その一線が破られれば、軍事力を投入しなければならない。これはもう化学兵器の非人道性の問題ではなく、米国大統領の威信とクレディビリティの問題なのである。

大統領が米議会に承認を求めたことも解せない。物事にはタイミングがあるだろう。この時点での議会承認要請は事実上の責任放棄ではないのか。今頃中東や欧州の米国の友人たちは大いに落胆し、米国の敵は歓喜の声を上げているだろう。

この判断の外交的悪影響は計り知れない。シリアのアサド政権は一息ついて態勢を立て直せる。どうせ限定攻撃しか出来ないとなれば、シリアは米国の足元を見る。内戦は続き、化学兵器が再び使用される可能性すらあるだろう。

問題はアサド政権の自国民へのサリン兵器使用ではないのか。如何なる経緯があるにせよ、アサド政権には出来るだけ早く正しくかつ厳しいメッセージを届ける必要がある。今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

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