フォト
無料ブログはココログ

« 2013年7月 | トップページ | 2013年9月 »

2013年8月の4件の記事

2013年8月26日 (月)

宮家邦彦の外交・安保カレンダー(8月26日-9月1日)

中国山東省済南で開かれていた薄熙来・元重慶市共産党委書記の裁判が今週終わる。判決が何時下されるかは知らないが、有罪は間違いないという。本当なのか。これほど結論が前もって分かっている裁判など、本当の司法裁判ではないだろうに。

今回は、中国版ツイッターなどで裁判を公開したことが「異例」だとか、中国政府が「透明性の向上」に努めた結果だとか、薄熙来が取調べ中の供述を翻したのは「予想外」だとか、実に様々なことが言われた。これほど的外れのコメントはないだろう。

中国において、政治的に機微な裁判が公開されるか否かの理由が「透明性の向上」であるはずはない。勿論、理由は政治だ。必ずしも国民すべてが「薄熙来は悪い」と考えていないと政府が感じたからこそ、この裁判は公開されたのである。

文革を指揮した四人組の裁判を思い出して欲しい。毛沢東の夫人だった江青は連日長時間テレビ中継された裁判の法廷で、「政治裁判」だと批判・嘲笑し、何度も退廷処分を受けたそうだ。今でも江青と裁判長との激しいやりとりを思い出す。

当時は1980年頃、中国にテレビは少なかっただろうが、「透明性」という点では今回よりもはるかに高かった。今の若い人には1966-76年の文化大革命が中国共産党にどれ程の悪影響を与えたかについて、どうもピンと来ていないらしい。

こうした背景を知れば、薄熙来がなぜ駄目なのか、どうして排除されなければならなかったのか、が分かる筈なのに。やはり、昔のことは当時の「同時代人」が一番良く分かっているのか。筆者も年寄りのようなことを言い始めたようだ、反省しなければ。

ところで、今週は安倍首相の中東訪問がある。これとの関係で面白いコラムを読んだ。Walter Russell MeadWall Street Journalに、ホワイトハウスは中東に関し5つの大きな見込み違いをしたと書いているのだ。

見誤ったのは、①イスラム主義集団の政治的成熟度と能力、②エジプトの政治情勢、③最も重要な2つの同盟国イスラエルとサウジアラビアとの関係、④中東のテロ活動の新たな力学、⑤シリアに介入しないことのコスト、の5つだという。

これだけ見誤れば、確かに大失敗といえるだろう。米国の中東政策がかくもお粗末だとは思いたくないが、だからだろうか、最近ホワイトハウスの中東チームがかなり入れ替わっているそうだ。

しかし、これは担当者を入れ替えれば済むという話ではないだろう。最大の問題は米国民の間に対中東政策に関するコンセンサスがないことだ。どこかの国の対中政策とそっくりではないか。

今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

2013年8月19日 (月)

宮家邦彦の外交・安保カレンダー(8月19-25日)

北京で815日を静かに過ごそうとしていたら、その前日14日にエジプトで軍と治安部隊がムスリム同胞団(以下、イフワーン)座り込みの強制排除を始めた。死者は既に700人を超えたようだが、今後も増え続けるだろう。

エジプトには1979年から2年間、アラビア語研修のため住んだが、当時のエジプト人はこれほど暴力的ではなかった。軍が牙を剝いただけなのか、イフワーンが再び過激化したのか、どちらかはまだ分からない。

エジプトのイフワーンは当初1952年革命に加わったものの、その後ナセル大統領暗殺を謀ったとして軍に厳しく弾圧された歴史を持っている。筆者がエジプト留学中の1980年代には既に地下に潜っていたと思うが、やはり軍とイフワーンは水と油だ。

靖国参拝をめぐる中国側の様々な動きは織り込み済みだったが、エジプト軍・治安部隊があのような稚拙な作戦しかできないとは思わなかった。モスクのミナレットに立て籠もるイフワーンに対し治安部隊が銃撃するなんて光景は見たくなかった。

中国から戻ったら、早速エジプトに関する見解につき多くの方々から問われた。これからどうなるのかという質問が最も多かった。勿論、答えは難しいが、大体次のようなラインで答えたように記憶する。

 軍と暫定政府がイフワーンと和解する可能性は非常に低い

 皮肉だが、現時点で最善は暫定政府側がイフワーンを徹底的に弾圧することだ

 そうすれば、少なくとも一定期間は安定が回復するだろうが、長続きはしない

 イフワーンの弾圧が不十分だった場合、最悪の場合内戦が始まる可能性がある

 更に、恐ろしいのは、混乱がヨルダンに飛び火する可能性だろう

 米国にとって当面のレッドラインはキャンプデーヴィッド合意の行方だ

 次の悪夢は混乱がヨルダンを越えて湾岸地域に及ぶこと

 その場合は東アジアへのエネルギー供給にも悪影響が及ぶだろう

 その次に心配なのは・・・・

今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

2013年8月12日 (月)

宮家邦彦の外交・安保カレンダー(812-18

東アジアでは安倍首相らが815日に靖国神社を参拝するかどうかで「ちょっとした騒ぎ」なのかもしれないが、筆者にとってこの問題は既に過去になりつつある。安倍首相の立場は「参拝については語らない」、それ以上でも、それ以下でもないからだ。

筆者にとって今週のハイライトはロシア大統領のイラン訪問だ。12日開始との報道もあったが、どうやら16日かららしい。83-4日にローハニ新大統領の就任式があったばかりだから、12日にせよ、16日にせよ、主要国首脳としては初の訪問だ。

こうしたプーチンの動きを如何に見るべきか。彼自身のイラン訪問は2度目、前回は確か2007年のカスピ海沿岸国会議出席だったと記憶する。いずれにせよ、国際会議参加ではない形でロシアの大統領がイランを訪問するのは初めてのはずだ。

最近のプーチンを見ていると一層「先祖返り」が進んでいるように見える。スノーデンの亡命承認や今回のイラン訪問など、わざわざ米国に喧嘩を売っている。自信があるのか、それとも、追い詰められているのか。この判断は地政学的に極めて重要だ。

今この原稿を北京行き飛行機の中で書いている。久しぶりに815日を北京で過ごすのだが、果たして今年はどうだろうか。もし、何事もなければ、それで良し。何かあれば、それも良し。

いずれにせよ、欧州や米国で起きていることと比較すれば、実に、ローカルとは言わないが、大した話ではないだろう。もっとグローバルで地政学的な議論をしたいものだとつくづく思う。今も戯言はこのくらいにしておこう。

いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

2013年8月 5日 (月)

宮家邦彦の外交・安保カレンダー(8月5-11日)

今回はまず中央アジアを取り上げたい。日本ではほとんど報じられないが、7日にはアスタナで中国とカザフスタンが観光協力協定を結ぶ。アスタナとはカザフスタンの新しい首都だが、この名前を聞いてピンと来るのは、かなりの中央アジア通だろう。

8日にはアゼルバイジャンと米国がブルガリアで行ってきた共同軍事訓練が終わる。アゼルバイジャンと米国が?何故ブルガリアで?どうやら、ブルガリアのノヴォセロという場所にこの種の訓練場があるらしい。アゼルバイジャンは重要な国なのだ。

9日には韓国の国防副大臣が率いる代表団もがアゼルバイジャンを訪問し、二国間軍事協力について議論するという。なるほど、韓国はちゃんと分かっている、ということか。逆に言えば、日本は大丈夫なのか、と言いたくなる。困ったことだ。

カイロでは米国の政治家が政治的仲介を試みるというが、エジプトに矜持はないのか。軍とムスリム同胞団やリベラルが当事者能力・統治能力を失い、政治的和解のために外国の政治家や外交官が関与するなんて、もうジョークとしか言いようがない。

アジアでは815日が近付きつつある。中国や韓国はまた、歴史だ、靖国だ、と騒ぐのだろうか。「米国も米国だ、韓国や中国の今のやり方を米国は放置するのか。」先月ワシントンに行った際、米国のある友人にこう喧嘩を売ったことがある。

「一部の日本の政治家のように、過去の価値体系に基づいて過去の事実を正当化しようとすることは間違いだ。何故なら、政治家とは過去ではなく、現在の価値体系で勝負する人種だからである。」

「他方、過去の事実を現在の価値体系のみで判断することも同様に危険だ。そんなことを韓国や中国に許せば、それはいずれ米国自身にも跳ね返ってくるぞ。」聡明なこの友人はそれを聞いただけで、筆者の真意を理解し、そのまま沈黙した。

この意味がお分かりだろうか。今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

« 2013年7月 | トップページ | 2013年9月 »