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2013年7月の5件の記事

2013年7月29日 (月)

宮家邦彦の外交・安保カレンダー(7月29日-8月4日)

日本では大きく報じられていないが、やはり欧米メディアの関心は中東和平プロセスの再開とイランの新大統領就任ではなかろうか。どちらもオバマ政権の「やる気」が問われているのだが、どうも最近のオバマの対中東政策はどれも感心しない。

先ずは、中東和平プロセスから。米国務省は中東和平交渉がイスラエルとパレスチナ双方の担当者が出席し729日夕(日本時間30日午前)からワシントンで行われると発表した。同プロセスは2010年秋から中断している。

中東専門家の反応はいま一つ。そりゃ、そうだろう、協議の内容は「交渉の具体的中身」でなく、あくまで「今後数カ月の交渉の進め方」についてだからだ。具体的内容ではなく、何をどのように話すかという「形式」に関する議論は物事の核心ではない。

誰もがそれを理解しながら、付き合っている。仲介役のケリー米国務長官がネタニヤフ首相とアッバス議長に電話をかけ、双方に交渉団派遣を要請したという。イスラエルはリブニ法相、パレスチナは和平交渉責任者のアリカットが出てくるそうだ。

これはもう限りなく歌舞伎に近い。今回は2日間の顔見世興行だが、ここでサプライズの進展があるとはだれも思っていない。ケリーの個人的執念か、それともオバマは本気でその政治的資産を費やすつもりがあるのか。恐らく前者だろう。

イランについては、ロウハニ新大統領の就任状承認式と就任宣誓式が83-4日、テヘランで開かれる。欧米でのロウハニに対する評価は割れており、核疑惑を巡りロウハニとの対話を唱える勢力と、更なる対イラン圧力を求める勢力が拮抗している。

ロウハニ新大統領の下でイランは変わるのか。核問題交渉で局面打開は可能か、それとも、国際的孤立を更に深めるのか。新大統領は経済制裁を緩和させ、疲弊したイラン経済を立て直すことが出来るのか。これもオバマの腹次第だろう。

一つだけ確かなことがある。ロウハニの登場は、ようやく従来の「強硬派の枢軸」、すなわちワシントンの反イラン強硬派、エルサレムのリクード等強硬派、アフマディネジャードとの間の「共存共栄」関係に終止符が打たれる可能性があるということだ。

ロウハニはこのトライアングルの奇妙な相互依存リンクを断ち切り、オバマ政権にクセ球を投げ始めるに違いない。ワシントンのいわゆる「ネオコン」の生き残りはこうした微笑外交的攻勢に耐えられるだろうか。お手並み拝見である。

個人的には30日に予定されるパキスタン大統領選に関心がある。関心といっても結果は見えている。野党第1党パキスタン人民党(PPP)が選挙をボイコットした以上、与党パキスタン・イスラム教徒連盟シャリフ派=PML(N)候補の勝利は確実だ。問題はその次に起こることだろう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

2013年7月22日 (月)

宮家邦彦の外交・安保カレンダー(7月22-28日)

今回の参議院選挙は一体何を意味するのだろう。21日夜、某テレビ局選挙特番でのコメント依頼があった。帰りに乗ったタクシーの運転手さんは、今回「生まれて初めて共産党候補に投票した」という。そういえば、確かに今回共産党は健闘している。

運転手さんによれば、今回は民主党に幻滅したが、自民党などに入れる気もないので、思い切って共産党に入れたのだそうだ。民主党は壊滅的敗北だったが、同党以外の中小政党も共産党を除けば概ね伸び悩んでいるようだ。

一方、自民党の得票率は34.7%だったが、全体得票率は52%程度で2010年の数字を5ポイント強下回る低得票率だった。要するに、自民党は圧勝した割りに票が伸びていないということか。自民党得票数も事前予想ほどではないそうだ。

自民党の獲得議席数は単独過半数には及ばず、引き続き公明党との連立が維持される。この微妙な結果は日本国民が「自民党には勝たせるが、防衛・安保などで劇的な変化までは望んでいない」ことを示しているのかもしれない。

22日に中国の国家海警局が正式に始動した。全国に11個の海警総隊を置き、総人員は16000人余り。日本の海上保安庁が12000人ほどだから、決して小さくはない。当面は日本の海保に頑張ってもらうしかないだろう。

25日から安倍首相はASEAN三カ国を歴訪する。特に、フィリピンでは歓迎されるだろう。それにしても、日本の総理がこれほどASEAN諸国を重視してくれることは有難い。また、シンガポールではバイデン米副大統領とも会談する。

中東では再びシリアに注目したい。一時は崩壊かとすら思われたアサド政権だが、このところ盛り返しているようであり、当面の危機は脱しつつあるようだ。このタイミングでも、英米等主要国はシリア反体制派への武器供与を控えている。どうやらアサド政権は一息つくことが出来そうだ。本当にこれで良いのだろうか。

いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

2013年7月15日 (月)

宮家邦彦の外交・安保カレンダー(7月15-21日)

 今週の注目は日韓関係だ。韓国側は外務次官を日本に派遣する。レベルの問題よりも、モメンタムが続くことが重要だろう。中国と韓国は明らかに違う。米国の同盟国同士で価値を共有する国とそれを共有しない国とでは扱いが異なるのは当然だ。

だが筆者の関心は中東にある。エジプトでの政治的大混乱を受け、今週は「イスラム教と民主主義」の関係を考える。先週この問題につき、ある読者の方から鋭い質問を受けた。これをきっかけに、今まで考えてきたことを改めて整理してみたい。

筆者が個人的に注目するのは、「イスラム教民主主義がいわゆる世俗主義と何処まで妥協できるか」ということだ。勿論、そもそもムスリムたちはそうした発想自体を認めないかもしれないから要注意なのだが、ここは誤解を恐れずに論を進めたい。

まず、言えることは、多くの人々が漠然と考えるとおり、イスラム諸国に「西欧型の民主主義」が根付く可能性は非常に低いということだろう。但し、イスラム諸国に民主主義が定着しない理由は「西欧型の宗教改革」がなかったからだとまでは思わない。

西欧キリスト教の宗教改革の一側面は「宗教に対する世俗主義の勝利」だと思っているが、イスラム教における宗教改革はこれとは全く違うロジック(原点回帰)で発展してきた。この点は、もう「どちらが良い、悪い」の問題ではないだろう。

そもそも、西欧型の民主主義は日本にすら根付いていない。日本と西欧では歴史的、文化的背景があまりに違うからだ。日本の世俗主義は一神教からの介入・干渉と戦った末に勝ち取った「世俗主義」ではない。この点は極めて重要だと思う。

その意味では、欧州と中東の方が、歴史的・文化的には、欧州と日本よりもはるかに近いとすら言えるだろう。筆者は「イスラム型の民主主義」が実現困難ではあっても、決して不可能だとは思っていない。

そもそも現在の欧州には「キリスト教民主同盟」がある。そうであれば、理論的には「イスラム教民主同盟」が中東に存在しても決しておかしくないはずだ。少なくとも、チュニジアなどの例を見れば、この可能性を頭から否定することはできないだろう。

問題の本質は、一般に聖俗の区別を認めないといわれるイスラム教に基づく「政治」が何処まで「世俗主義」勢力との共存と取引を認める度量を持つかにある。この点は国によって、また同じ国でも時代によって、かなり温度差があるようだ。

例えば、チュニジア、リビア、イエメンにはまだその可能性が残っているようにも思えるが、少なくとも今のエジプトでは難しいだろう。また、GCC諸国、サウジアラビアですら、宗教と世俗政治は微妙に共存してきている。

アラブの春だけが中東における政治的試行錯誤ではないのだ。中東地域での「イスラム」、「世俗主義」の概念およびその「両者の関係」は地域、時代によって変化している。イスラムの純度は常に世俗主義からの挑戦を受けているとも言えるだろう。

その意味ではイスラムと民主主義の関係を一概に言うのは非常に難しい。今週はこのくらいにしよう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

2013年7月 8日 (月)

宮家邦彦の外交・安保カレンダー(7月8-14日)

先週から今週にかけて筆者が気になるニュースはパキスタン首相の訪中だ。4日に習近平と、5日に李克強とそれぞれ会談、経済協力強化で一致し、パキスタン南西部の港と新疆ウイグル自治区を結ぶ「中国パキスタン経済回廊」を整備するらしい。

勿論、今の段階で大騒ぎする必要はないかもしれない。しかし、ウイグル自治区からパキスタンを抜けてインド洋に至るルートとは、さすが中国だ。なかなかの戦略的で地政学的な発想ではないか。日本は中央アジアを忘れてはならない。

もう一つ気になるのが中国とロシア海軍の合同演習だ。今すぐ大騒ぎする話ではないが、昨年は青島沖で行われ、今回はウラジオストク沖の日本海で初めて行われるらしい。当初中国は日本により近い日本海での実施を希望したとも報じられた。

報道によれば、12日に終了予定の同演習には露海軍から太平洋艦隊旗艦のミサイル巡洋艦や大型対潜哨戒艇2隻など計7隻、中国からも北海艦隊のミサイル駆逐艦4隻やミサイル・フリゲート艦2隻などの計7隻の艦艇が参加しているそうだ。

10日と11日、米中「戦略・経済対話」がワシントンで開かれる。6月上旬の米中首脳会談以来初の閣僚級会合だが、今回は中国側に新しいメッセージがあるか否かが気になる。いつものお経ばかりなら、先月の首脳会議は成功しなかったということか。

最後は中東。エジプトで混乱が拡大している。経緯は不明だが、カイロ郊外の軍施設近くでムスリム同胞団のデモ参加者が40人以上死亡、300人以上負傷したという。軍が本当に発砲したのだとしたら、同胞団と軍部の関係改善の目はもうないだろう。

軍は同胞団を徹底的に弾圧するつもりなのか。こうなればエルバラダイだろうが、誰だろうが、カイロで当分まともな統治はできないだろう。今同胞団の指導部に穏健派がどの程度残っているか知らないが、仮にいたとしても、もう手遅れかもしれない。

いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

2013年7月 1日 (月)

宮家邦彦の外交・安保カレンダー(7月1-7日)

先週の中韓首脳会談後、これは「日本外し」ではないかと何度も質問を受けた。筆者の答は「否」、それを言うなら、むしろ「北朝鮮外し」だろう。今回は数少ない共通の戦略的懸念である「北朝鮮の核」について中韓双方が意見調整を望んだ結果だと思う。

案の定、北朝鮮は「許し難い重大挑発」だと強く反発した。韓国大統領を呼び捨てにしたぐらいだから、中国側の態度にショックを受けたのか。今後中国の対北朝鮮政策に戦略的変化があるか否かに注目したい。(今のところ、その兆候はないが・・・)

1日にブルネイでようやく日韓外相会談が開かれた。韓国側の「バランス」外交のメカニズムは意外に分かりやすい。まずオバマとの意見交換、日本との首脳レベルの接触は内政上「不適切」だから、次に中国との意見交換を優先せざるを得ない。

だが、そうは言っても、北朝鮮問題以外に中韓の戦略的共通利益は少ない。実際、韓国が中国から取れるものは限られている。しかも、最近のウォン安や韓国経済の先行きを考えれば、日本との関係をこのまま放置する訳にもいかないだろう。

以上を考えれば、ブルネイでの日本との外相レベルの短時間会談なら、韓国内でもそれほど批判は浴びないだろう。恐らく現在の韓国側の「バランス感覚」はこのようなイメージだと思う。このまま、日韓関係が順調に改善していくことを望みたい。

最近はアジアばかりが注目されるが、筆者の最大の懸念はエジプトだ。一年前にモルスィ大統領に対するこれだけ大規模な「退陣要求デモ」が起こることを一体誰が予想しただろうか。中東専門家の予想がまた外れていく。

エジプトの統治機構が壊れ始めたのか、それとも、元々統治機構など存在しないのか、いや、そもそもエジプト人に統治能力などがないのか。様々な疑問が湧いてくるが、これらの問いに対する筆者の答はいずれも「否」である。

現在エジプトに存在する統治機構は軍だけであり、軍部と軍人だけがこの国で統治経験を持っている。ムバーラクを退陣させたのと同じ「負のエネルギー」が今やモルスィに向かっているが、その直撃を巧妙に回避しているのも軍だけだろう。

この国の民衆が統治能力の何たるかを知るのは当分先の話かもしれない。このままでは軍が統治機構として戻ってきてしまうだろう。広場で騒いでいる付和雷同の民衆たちがエジプトを変えられないのだとしたら、一体誰がエジプトを変えるのか?

いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

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