フォト
無料ブログはココログ

« 宮家邦彦の外交・安保カレンダー(7月8-14日) | トップページ | 宮家邦彦の外交・安保カレンダー(7月22-28日) »

2013年7月15日 (月)

宮家邦彦の外交・安保カレンダー(7月15-21日)

 今週の注目は日韓関係だ。韓国側は外務次官を日本に派遣する。レベルの問題よりも、モメンタムが続くことが重要だろう。中国と韓国は明らかに違う。米国の同盟国同士で価値を共有する国とそれを共有しない国とでは扱いが異なるのは当然だ。

だが筆者の関心は中東にある。エジプトでの政治的大混乱を受け、今週は「イスラム教と民主主義」の関係を考える。先週この問題につき、ある読者の方から鋭い質問を受けた。これをきっかけに、今まで考えてきたことを改めて整理してみたい。

筆者が個人的に注目するのは、「イスラム教民主主義がいわゆる世俗主義と何処まで妥協できるか」ということだ。勿論、そもそもムスリムたちはそうした発想自体を認めないかもしれないから要注意なのだが、ここは誤解を恐れずに論を進めたい。

まず、言えることは、多くの人々が漠然と考えるとおり、イスラム諸国に「西欧型の民主主義」が根付く可能性は非常に低いということだろう。但し、イスラム諸国に民主主義が定着しない理由は「西欧型の宗教改革」がなかったからだとまでは思わない。

西欧キリスト教の宗教改革の一側面は「宗教に対する世俗主義の勝利」だと思っているが、イスラム教における宗教改革はこれとは全く違うロジック(原点回帰)で発展してきた。この点は、もう「どちらが良い、悪い」の問題ではないだろう。

そもそも、西欧型の民主主義は日本にすら根付いていない。日本と西欧では歴史的、文化的背景があまりに違うからだ。日本の世俗主義は一神教からの介入・干渉と戦った末に勝ち取った「世俗主義」ではない。この点は極めて重要だと思う。

その意味では、欧州と中東の方が、歴史的・文化的には、欧州と日本よりもはるかに近いとすら言えるだろう。筆者は「イスラム型の民主主義」が実現困難ではあっても、決して不可能だとは思っていない。

そもそも現在の欧州には「キリスト教民主同盟」がある。そうであれば、理論的には「イスラム教民主同盟」が中東に存在しても決しておかしくないはずだ。少なくとも、チュニジアなどの例を見れば、この可能性を頭から否定することはできないだろう。

問題の本質は、一般に聖俗の区別を認めないといわれるイスラム教に基づく「政治」が何処まで「世俗主義」勢力との共存と取引を認める度量を持つかにある。この点は国によって、また同じ国でも時代によって、かなり温度差があるようだ。

例えば、チュニジア、リビア、イエメンにはまだその可能性が残っているようにも思えるが、少なくとも今のエジプトでは難しいだろう。また、GCC諸国、サウジアラビアですら、宗教と世俗政治は微妙に共存してきている。

アラブの春だけが中東における政治的試行錯誤ではないのだ。中東地域での「イスラム」、「世俗主義」の概念およびその「両者の関係」は地域、時代によって変化している。イスラムの純度は常に世俗主義からの挑戦を受けているとも言えるだろう。

その意味ではイスラムと民主主義の関係を一概に言うのは非常に難しい。今週はこのくらいにしよう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

« 宮家邦彦の外交・安保カレンダー(7月8-14日) | トップページ | 宮家邦彦の外交・安保カレンダー(7月22-28日) »

経済・政治・国際」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1401198/52451954

この記事へのトラックバック一覧です: 宮家邦彦の外交・安保カレンダー(7月15-21日):

« 宮家邦彦の外交・安保カレンダー(7月8-14日) | トップページ | 宮家邦彦の外交・安保カレンダー(7月22-28日) »