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2013年6月の4件の記事

2013年6月24日 (月)

宮家邦彦の外交・安保カレンダー(6月24-30日)

今週は北京で中韓首脳会談が開かれる。日本では朴大統領が日本より中国を優先したなどと懸念する向きもあるが、果たしてどうだろうか。先々週のカリフォルニアでの米中首脳会談を見ても、中韓関係が急速に進展するとは思えない。

中韓関係は磐石ではない。中国は韓国の同盟国ではないし、相互信頼関係が深まっているわけでもない。両国に共通するのは、対日関係が悪く関係改善を急いでいないことぐらい。日本は中韓の違いをよく吟味し、対韓関係改善から始めるべきだ。

627日から米国とフィリピンがスカボロー礁近くで共同海軍演習を行う。現在同礁では中国が軍事施設を建設していると報じられた。67-8日には米原潜がフィリピンに寄港。今年に入り既に10隻の米主要艦船がフィリピンに寄港しているそうだ。

こうした政策をフィリピンが1990年代から維持していれば、現在のような南シナ海情勢はそもそもなかったはず。その意味でも、スービックから米海軍を追い出した1992年のフィリピンは21世紀の東アジアの運命を変えたともいえるだろう。

先週の最大のサプライズはスノーデン元CIA職員の香港出国、ロシア入国だ。弱冠29歳の男一人に米国政府全体が振り回されている様は、悲劇というより喜劇に近い。しかも、この喜劇の登場人物たちの置かれたそれぞれの状況は更に喜劇的だ。

まずは米国。ワシントンはスノーデンがNSA関係の機密情報をどの程度保持しているかすら正確に承知していないという。NSAといえば米国諜報機関の中でも最も機密性の高い機関なのに。これが事実なら本当に米国は大丈夫なのかと心配になる。

スノーデンの保持する情報が単なる事実関係情報だけなら良いが、NSAの情報収集システムそのものに関する最高機密の技術情報が漏洩した場合のダメージは計り知れない。当面は米国のお手並み拝見というところか。

今回香港は巧く立ち回った。米国にスノーデンを引き渡せば、中国との関係がギクシャクしかねないし、逆に中国側に引き渡せば、米国との関係は決定的に悪化する。幸いにも「時限爆弾」は香港領域内で炸裂しなかったということだ。

その点は中国も同様だ。万一、スノーデンが中国に亡命を求めてきたら、北京はどう対応するつもりだったのだろう。下手にスノーデンを保護すれば、米国との関係悪化は決定的となる。中国にとってスノーデンはそれほど価値のある男だろうか。

ロシアの動きも基本的には同じだろう。スノーデンの情報は欲しいが、米国との関係悪化は避けたい。されば、ロシアとしてもスノーデンの身柄拘束に消極的とならざるを得ないが、かといって、米国の言いなりになる義務もない。悩ましいところだ。

ここで注目されるのはエクアドルの動きだろう。スノーデンに対し政治亡命を認めるかどうかが注目される。ウィキリークスで有名なアサンジは現在ロンドンのエクアドル大使館に「亡命」しているが、いくら反米政権とはいえ、エクアドルはスノーデン一人のために米国と本気で喧嘩を始めるつもりなのだろうか。

今週は米国外交の威信そのものが問われている。

いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

2013年6月17日 (月)

宮家邦彦の外交・安保カレンダー(6月17-23日)

先週のサプライズはイランの大統領選挙だった。投票日翌日に内務省が早々と最終結果を発表したこと自体、かなり驚いた。政府発表によれば、投票率は72.7%で、ロウハニ候補は得票率で50.7%の1861万票余りを獲得する勝利だったという。

2位、3位は保守強硬派のテヘラン市長ガリバフ候補と核交渉担当のジャリーリ候補だが、得票率はそれぞれ16%と11%程度。従来は接戦のため公式発表が遅れたり、不正工作が噂されたりしたものだが、今回は「改革派・穏健派」の圧勝だった。

これだけ差がつくと、不正工作も効果がなかったのか。安保理経済制裁は相当効いてきたのか、国民は対欧米強硬策を続ける宗教界強硬派や軍部の失政と腐敗に不満を抱いていた。イラン国民は国際協調路線と生活レベル向上を求めたのだろう。

1979年以降、イランでは最高指導者に近い宗教勢力が常に政治的主導権を握ってきた。ところが、今回の選挙は今のイランに政治的変化を求める声が消えてはいなかったことを示している。これは今回筆者が読み切れなかった点でもある。

但し、楽観は禁物だ。穏健派・改革派の大統領というと、個人的には1997年に当選したハタミ大統領を思い出す。中東第二課長だった筆者は当時、穏健派大統領選出によりイランが徐々に変わっていくだろうと大いに期待したものだ。

しかし、その期待は二つの理由で裏切られた。一つはハタミ選出後保守強硬派が巻き返し、新大統領が新政策を打ち出せなかったため。もう一つは、米国がイランの穏健派・改革派を信用せず、新大統領との直接対話に踏み切らなかったためだ。

この個人的体験のせいか、今回穏健派・改革派の候補が勝利したからといって、イランを巡る情勢が大きく変わるとは思えない。特に、新大統領が継承するイランの内外情勢は1997年当時よりもはるかに複雑で困難だ。この点を忘れてはならない。

欧米がイランを見る目は厳しい。新大統領が国際社会から信頼を得るためには核、シリア問題を含む諸懸案につき大幅な譲歩が必要だろうが、イランの国内政治情勢はそれを許さないだろう。特に、核問題で新大統領に譲歩の余地は少ない。

また、アフマディネジャード前大統領の時代には、同大統領・軍部とハーメネイ最高指導者以下宗教勢力との間の確執が伝えられた。ロウハニ大統領の下ではこの関係が再び変化し、宗教(イスラム法学者)勢力が主導権を奪い返す可能性もある。

そうだとすれば、新大統領は真の政治経済改革や穏健な外交政策を本当に主導できるのか。再び裏切られる可能性があることだけは覚悟すべきだろう。こうした厳しい状況の中で唯一の救いはイランの若い有権者たちである。

彼らはパーレビ王制崩壊やホメイニ革命を知らない。彼らが知っているのは自由がなく、硬直化し、腐敗が進み、統治の正統性を失い始めた「イスラム共和制」だけである。こうした若い世代が本当に動けばイラン内政は再び変化し始めるだろう。

いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

2013年6月10日 (月)

宮家邦彦の外交・安保カレンダー(6月10-16日)

先週の米中首脳会談の結果は、実際のところ、どうだったのだろう。カリフォルニアの保養地での一泊二日の非公式な会談。米中首脳レベルとしては異例のサミットであり、米中関係が大いに進展したのではないかと疑心暗鬼になる人も多いだろう。

しかし、両国間の矛盾はあまりに根深く、簡単な解決などあり得ない。世界の中国専門家の注目点も、会談のサブスタンスというよりは、両首脳のケミストリーというか、相性というか、どこまで「馬が合う」かを見極めることだったのではなかろうか。

このような長時間の非公式会談は一種の「両刃の剣」だ。確かに、これだけ長く一緒に居れば、両首脳が仲良くなる可能性は高い。しかし、同時に懸念すべきは、これだけ長く一緒に居たために、逆に「馬が合わない」ことが露呈する可能性だ。

画像や動画で見る限り、習近平の動きはぎごちない。クリントン政権で副大統領だったアル・ゴアもそうだった。何をやっても動きが不自然で、「ピノキオ」という有難くない渾名まで拝命した。やはり習近平も人の子で、緊張していたのだろうか。

中国人に限らず、人は緊張すると、余裕がなくなる。オバマが知りたいのは中国側の本音だろうが、習近平は自ら本音を語るほど余裕があっただろうか。そもそも、いくら最高指導者でも、周りに他の中国人がいれば、本音はなかなか言いにくいものだ。

中国側にとって最悪のケースは、習近平が十分リラックスせず、せっかくの非公式でプライベートな環境を作ったのに、相変わらず公式見解を長々と喋り、恐らくオバマが望んだであろう当意即妙の議論を楽しむ機会が失われる場合だろう。

これだけ長く一緒に居て仲良くなれば大成功だが、万一、両者のケミストリーが合わなかった場合の政治的コストは決して小さくない。現時点で両者の相性の結果は明らかではないが、長く話せば良いという訳ではないことも、頭の隅に置いておくべきだろう。

今週の注目は14日のイラン大統領選挙だ。やれ改革派だ、穏健派だなどと西側マスコミは騒ぐが、結局彼らのような政治家は大統領選に立候補できない。イランの選挙制度は相変わらず、ハーメネイに近い人間しか立候補できないシステムなのだ。

この監督者評議会(Guardian Council)がイランの「民主主義もどき」を如何に非民主的にしてきたことか。あれだけ民度の高いイラン人なのに、彼らはなぜこんな馬鹿なことを繰り返すのだろうか。本当に残念でならない。

アフマディネジャード大統領がいなくなっても、イランの政治は変わらないだろう。その間に、最高指導者だけが生き残り、イラン人庶民の生活が確実に悪化していく。こんなイランを見るのは実に忍びない。

いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

2013年6月 3日 (月)

宮家邦彦の外交・安保カレンダー(6月3-9日)

今週注目のイベントはやはり米中首脳会談だ。通常ワシントンか北京で開かれてきたが、今回はカリフォルニアで丸二日、しかもプライベートな環境で行う。米中首脳間に最低限の相互信頼関係が生まれれば良いのだが。そう簡単ではないだろう。

米側が最も懸念するのは中国側、特に人民解放軍による対米サイバー攻撃だ。以前から内々この問題は指摘されてきたが、最近米側はオンレコで対中懸念を表明するようになった。これまでの中国側の不誠実な対応に業を煮やしたのだろう。

米側(ワシントンポスト)の報道が正しければ、中国側が不正に入手した情報はいずれも東アジアに前方展開する米軍の最新鋭武器システムに関するものばかり。米国の対中抑止力を大幅に減じかねないという意味で日本にとっても深刻である。

今回の米中首脳会談には米国でも様々な議論があるが、中国に最も同情的な米国人識者の間でも、今回の首脳会談で大きな進展を予測する向きは少ない。多くは両首脳がせめて個人的に親しくなり、より率直に話し合えることを期待する程度だ。

一方、中国が米国に求めているのは「新たな大国同士の関係」である。この概念が正確に意味するところは不明だが、中国が言いたいことは大体次のようなものではなかろうか。

●中国はもう小国ではなく、米国は中国を大国として取り扱うべし

●米国の力の衰退は明らかであり、米国は大国中国と、対立ではなく、共存すべし

●米国はこうした中国の大国としての権益を東アジア地域において認めるべし

●その権益の中には、当然ながら、政治、経済、軍事、領域的権益が含まれる

少なくとも、ここら辺が、当たらずとも遠からずだろう。

これに対し、米国側の考え方はちょっと違う。そもそも米国は中国大陸に野心はないし、そんな野心を持つつもりもない。米国の関心はあくまで海洋覇権だが、もし中国がそれに挑戦してくるならば、決して容赦はしないだろう。

筆者が恐れているのは将来の「第二次太平洋戦争」だ。少なくとも、このままいけば、その可能性はある。中国の主張は、残念ながら、米国の西太平洋における権益の一部を放棄せよと言っているに等しい。

現在の中国には80年前の日本のイメージがどうしても重なる。勿論、当時の日本と今の中国は同じではない。しかし、西太平洋における米国の覇権にチャレンジするという点で基本的構造は変わらない。

先週はNSC設置に関する懇談会の最終会合があった。その翌日には海外情報機関の設置について記事が出ていた。これをきっかけに、日本の対外諜報活動の整備が進むことを大いに期待したい。

ただ、ちょっと気になるのはNSCと情報機関の役割分担だ。両者は相互に独立した存在である。前者は政策の企画立案実施を含む政策調整機関であるのに対し、後者は情報収集・分析機関で政策作りにはタッチしない。いや、すべきではないのだ。

日本でこのことを正確に理解している人はジャーナリストにも少ない。これが筆者の実感である。更に、本格的対外情報機関を作る場合、情報収集部門と情報分析部門の両方がしっかりしている必要がある。このことをメディアはどの程度理解しているだろうか。

情報収集部門はいわゆるオペレーター、工作員、諜報員の部隊であるのに対し、情報分析部門はアナリストの集団だ。本当に世界レベルのインテリジェンス・サービスを作りたいなら、オペレーターとアナリストの両方の養成が不可欠である。

総じて言えることは、オペレーターとアナリストを両方バランスよく強化していくべし、ということなのだろうが、アナリストとオペレーターのベストミックスを実現するのは容易ではない。現時点で、筆者にどれがベストかについての答えはない。

但し、一点明らかなことがある。筆者の知る限り、西側主要国のインテリジェンス・サービスの最高幹部の殆どは地域や国際関係の専門家であり、オペレーターがトップになったという話は聞かない。対外情報機関の組織作りは想像以上に複雑だ。

いずれにせよ、この問題を関係省庁間の縄張り争いなどに矮小化させないことが肝心だ。さもないと、「JCIA」は出来たものの、結局は今のままで、状況は変わらない、ということにもなりかねない。

いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

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