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2013年6月 3日 (月)

宮家邦彦の外交・安保カレンダー(6月3-9日)

今週注目のイベントはやはり米中首脳会談だ。通常ワシントンか北京で開かれてきたが、今回はカリフォルニアで丸二日、しかもプライベートな環境で行う。米中首脳間に最低限の相互信頼関係が生まれれば良いのだが。そう簡単ではないだろう。

米側が最も懸念するのは中国側、特に人民解放軍による対米サイバー攻撃だ。以前から内々この問題は指摘されてきたが、最近米側はオンレコで対中懸念を表明するようになった。これまでの中国側の不誠実な対応に業を煮やしたのだろう。

米側(ワシントンポスト)の報道が正しければ、中国側が不正に入手した情報はいずれも東アジアに前方展開する米軍の最新鋭武器システムに関するものばかり。米国の対中抑止力を大幅に減じかねないという意味で日本にとっても深刻である。

今回の米中首脳会談には米国でも様々な議論があるが、中国に最も同情的な米国人識者の間でも、今回の首脳会談で大きな進展を予測する向きは少ない。多くは両首脳がせめて個人的に親しくなり、より率直に話し合えることを期待する程度だ。

一方、中国が米国に求めているのは「新たな大国同士の関係」である。この概念が正確に意味するところは不明だが、中国が言いたいことは大体次のようなものではなかろうか。

●中国はもう小国ではなく、米国は中国を大国として取り扱うべし

●米国の力の衰退は明らかであり、米国は大国中国と、対立ではなく、共存すべし

●米国はこうした中国の大国としての権益を東アジア地域において認めるべし

●その権益の中には、当然ながら、政治、経済、軍事、領域的権益が含まれる

少なくとも、ここら辺が、当たらずとも遠からずだろう。

これに対し、米国側の考え方はちょっと違う。そもそも米国は中国大陸に野心はないし、そんな野心を持つつもりもない。米国の関心はあくまで海洋覇権だが、もし中国がそれに挑戦してくるならば、決して容赦はしないだろう。

筆者が恐れているのは将来の「第二次太平洋戦争」だ。少なくとも、このままいけば、その可能性はある。中国の主張は、残念ながら、米国の西太平洋における権益の一部を放棄せよと言っているに等しい。

現在の中国には80年前の日本のイメージがどうしても重なる。勿論、当時の日本と今の中国は同じではない。しかし、西太平洋における米国の覇権にチャレンジするという点で基本的構造は変わらない。

先週はNSC設置に関する懇談会の最終会合があった。その翌日には海外情報機関の設置について記事が出ていた。これをきっかけに、日本の対外諜報活動の整備が進むことを大いに期待したい。

ただ、ちょっと気になるのはNSCと情報機関の役割分担だ。両者は相互に独立した存在である。前者は政策の企画立案実施を含む政策調整機関であるのに対し、後者は情報収集・分析機関で政策作りにはタッチしない。いや、すべきではないのだ。

日本でこのことを正確に理解している人はジャーナリストにも少ない。これが筆者の実感である。更に、本格的対外情報機関を作る場合、情報収集部門と情報分析部門の両方がしっかりしている必要がある。このことをメディアはどの程度理解しているだろうか。

情報収集部門はいわゆるオペレーター、工作員、諜報員の部隊であるのに対し、情報分析部門はアナリストの集団だ。本当に世界レベルのインテリジェンス・サービスを作りたいなら、オペレーターとアナリストの両方の養成が不可欠である。

総じて言えることは、オペレーターとアナリストを両方バランスよく強化していくべし、ということなのだろうが、アナリストとオペレーターのベストミックスを実現するのは容易ではない。現時点で、筆者にどれがベストかについての答えはない。

但し、一点明らかなことがある。筆者の知る限り、西側主要国のインテリジェンス・サービスの最高幹部の殆どは地域や国際関係の専門家であり、オペレーターがトップになったという話は聞かない。対外情報機関の組織作りは想像以上に複雑だ。

いずれにせよ、この問題を関係省庁間の縄張り争いなどに矮小化させないことが肝心だ。さもないと、「JCIA」は出来たものの、結局は今のままで、状況は変わらない、ということにもなりかねない。

いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

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