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2013年6月17日 (月)

宮家邦彦の外交・安保カレンダー(6月17-23日)

先週のサプライズはイランの大統領選挙だった。投票日翌日に内務省が早々と最終結果を発表したこと自体、かなり驚いた。政府発表によれば、投票率は72.7%で、ロウハニ候補は得票率で50.7%の1861万票余りを獲得する勝利だったという。

2位、3位は保守強硬派のテヘラン市長ガリバフ候補と核交渉担当のジャリーリ候補だが、得票率はそれぞれ16%と11%程度。従来は接戦のため公式発表が遅れたり、不正工作が噂されたりしたものだが、今回は「改革派・穏健派」の圧勝だった。

これだけ差がつくと、不正工作も効果がなかったのか。安保理経済制裁は相当効いてきたのか、国民は対欧米強硬策を続ける宗教界強硬派や軍部の失政と腐敗に不満を抱いていた。イラン国民は国際協調路線と生活レベル向上を求めたのだろう。

1979年以降、イランでは最高指導者に近い宗教勢力が常に政治的主導権を握ってきた。ところが、今回の選挙は今のイランに政治的変化を求める声が消えてはいなかったことを示している。これは今回筆者が読み切れなかった点でもある。

但し、楽観は禁物だ。穏健派・改革派の大統領というと、個人的には1997年に当選したハタミ大統領を思い出す。中東第二課長だった筆者は当時、穏健派大統領選出によりイランが徐々に変わっていくだろうと大いに期待したものだ。

しかし、その期待は二つの理由で裏切られた。一つはハタミ選出後保守強硬派が巻き返し、新大統領が新政策を打ち出せなかったため。もう一つは、米国がイランの穏健派・改革派を信用せず、新大統領との直接対話に踏み切らなかったためだ。

この個人的体験のせいか、今回穏健派・改革派の候補が勝利したからといって、イランを巡る情勢が大きく変わるとは思えない。特に、新大統領が継承するイランの内外情勢は1997年当時よりもはるかに複雑で困難だ。この点を忘れてはならない。

欧米がイランを見る目は厳しい。新大統領が国際社会から信頼を得るためには核、シリア問題を含む諸懸案につき大幅な譲歩が必要だろうが、イランの国内政治情勢はそれを許さないだろう。特に、核問題で新大統領に譲歩の余地は少ない。

また、アフマディネジャード前大統領の時代には、同大統領・軍部とハーメネイ最高指導者以下宗教勢力との間の確執が伝えられた。ロウハニ大統領の下ではこの関係が再び変化し、宗教(イスラム法学者)勢力が主導権を奪い返す可能性もある。

そうだとすれば、新大統領は真の政治経済改革や穏健な外交政策を本当に主導できるのか。再び裏切られる可能性があることだけは覚悟すべきだろう。こうした厳しい状況の中で唯一の救いはイランの若い有権者たちである。

彼らはパーレビ王制崩壊やホメイニ革命を知らない。彼らが知っているのは自由がなく、硬直化し、腐敗が進み、統治の正統性を失い始めた「イスラム共和制」だけである。こうした若い世代が本当に動けばイラン内政は再び変化し始めるだろう。

いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

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