宮家邦彦の外交・安保カレンダー(12月10-16日)
今週は日本で総選挙がある。今ワシントンに出張中だが、日本から聞こえてくる下馬評では自民党の圧勝とか。本当だろうか、今回の選挙ばかりは予測不能だ。筆者が「アジア村」と呼ぶワシントンのアジア専門家の小さなコミュニティでもさすがに関心が高い。
昨日到着して当地の友人数人から既に話を聞いたが、今のところ最大公約数は「誰でもいいから、言ったことを実行してくれる政府になってほしい」ということに尽きるようだ。過去3年間の民主党に対する評価は分かれても、この点だけは一致していると思う。
「言ったことを実行する」を英語ではdeliverという。He/She can deliver!とは高い評価であり、政治の町ワシントンで信頼を勝ち取る第一歩だ。だからTrust me!といえば、deliverすることが期待され、それでdeliverできなければ「一巻の終わり」だ。
ワシントンでそういう人は直ぐ「終わる」のだが、あの人はもう日本でも「終わってしまった」ようだ。政治の世界では古今東西、基本的ルールは同じ、ということだろう。少なくとも今度の内閣は民主党政権よりもdeliverの重要性を知って欲しいものだ。
ワシントンといえば、本日「財政の崖」問題で大統領と下院議長が協議を行ったようだ。詳細が外に出ないということは、共和党側に妥協の兆しがない証拠だろう。そうであれば、越年、というか、新年早々からのガチンコで民主党側はショック療法を狙うのだろうか。
韓国の大統領選挙は来週19日だが、これも気になるところだ。米国にとって東アジアの二大同盟国の内政は重要だと思うのだが、ワシントンではアジア村以外に関心を持つ向きは少ないのではないか。これも今始まった話ではないが…。
筆者注目のエジプトではモルシー大統領が大統領権限を一方的に強化した「憲法宣言」なるものを撤回しつつも、12月15日に予定される新憲法草案の国民投票は予定通り実施するという。
何のことはない、2010年2月に当時のムバラク大統領が使ったのと同じ「小出し妥協戦術」であり、これが機能しないことは明らかだろう。エジプト人は政治権力を握ると皆独裁の傾向を強めるのか、それとも独裁でもしないとエジプトは統治できないのか。
今のところ筆者の見立ては後者である。モルシー大統領にとって大きな賭けは続くが、このままいけば勝算は益々少なくなっていくだろう。これでムスリム同胞団が失敗すれば、軍が前面に出るしかなくなる。それを避けたい軍はいずれ新たな傀儡を担ぐだろう。
いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
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